日本株26銘柄の「宿命マップ」— 6業種を同じ物差しで測って分かったこと【総まとめ】

銘柄カルテ

※本記事は教育・解説を目的としたものです。特定の売買を勧めたり、将来の値動きを断定したりするものではありません。約3.5年(2023-01〜2026-07)の統計にもとづく特性記述です(数値基準日: 2026-07-03)。
📖 統計用語(β・説明力・純固有・PBRなど)が分からなくなったら用語辞典へ。シリーズ全体の目次は銘柄カルテの歩き方へ。

「銘柄カルテ」シリーズの総まとめです。市場・為替 → 業種 → 純固有という同じ物差しで、6業種26銘柄を測り終えました。1銘柄ずつでは見えなかった「日本株の地形」を、業種ごとに一望します。

6業種の要約表

業種 市場β 説明力R²(業種込み) 純固有ドリフトの範囲 PBRの世界
半導体(4社) 1.6〜1.8 49〜68% −74%〜+108% 15〜45倍(純資産割れ0%)
電機(5社) 0.8〜1.1 29〜48% −46%〜+51% 2〜3倍
商社(5社) 0.8〜0.9 64〜74% +19%〜+60%(全社プラス) 1.4〜2.0倍
自動車(6社) 0.7〜1.0 47〜66% −16%〜−122%(全社マイナス) 0.2〜1.1倍(割れ常態)
銀行(3行) 0.7〜0.8 78〜82% +70%〜+84%(全行プラス) 0.5→1.6倍へ反転
通信(3社) 0.2 39〜48% −24%〜+15% 1.2〜3.3倍

※純固有ドリフト=市場・為替・業種因子が示す想定に対する累積の上振れ/出遅れ(対数)。PBRは開示ベース。

発見1:業種の「宿命」は5つの型に分かれた

  • 下向きの宿命(自動車):6社全員が因子想定に出遅れ、純資産割れが常態。EV転換・関税の構造的な重し
  • 上向きの宿命(半導体):AIサイクルで業種ごと上振れ。市場は純資産の15〜45倍を払う
  • 反転した宿命(銀行):金利正常化で純資産割れ(0.5倍)から1.6倍へ。宿命は固定ではない
  • 静かな上向き(商社):5社全員が純固有プラス(+19〜+60%)。資本効率改革と株主還元が業種ぐるみで評価された、実はもっとも“外れのない”業種だった
  • 無風の宿命(通信):市場β0.2前後という圧倒的なディフェンシブ。相場が荒れる日の避難先(AI相場と逆相関、という発見は[AI地図編]で)

発見2:「電機」という業種は、もう存在しないのかもしれない

意外だったのは電機です。5社の業種β(お互いの連動)は0.14〜0.44と全業種で最弱、モデル全体の説明力も29〜48%と最低水準。純固有もソニー−46%・富士通−22% vs パナソニック+50%・三菱電機+51%と真っ二つでした。

エンタメ(ソニー)・ITサービス(富士通)・重電インフラ(日立・三菱電機)・車載電池(パナソニック)——証券コード上は同じ「電機」でも、経済的にはもう別業種です。「業種」という括り自体を疑う目を持つこと。これが26銘柄を測って得た、いちばん批判的な学びです。

発見3:市場β(日経との連動)は業種でほぼ決まる

半導体1.6〜1.8 > 電機・自動車・商社0.7〜1.1 > 銀行0.7〜0.8 > 通信0.2。「日経平均が1%動いた日に自分の銘柄が何%動くはずか」は、銘柄名を知らなくても業種でほぼ当たりがつきます。日経が急落した日に半導体が3%落ちても「固有の悪材料」ではなく、通信が0.3%しか落ちなくても「強い」わけではない——βを知ると、日々のニュースの読み方が変わります。

発見4:どの業種でも「振れ」は個社の物語

6業種すべてで、純固有どうしのペア相関はゼロ〜マイナス(平均−0.1〜−0.3)でした。業種の波(共通部分)を除いた後に残る単日の急騰・急落は、トヨタの資本政策、ホンダの統合サーガ、東エレクの決算と米規制……と、必ずその会社だけの物語です。つまり:

水準(トレンド)は業種が決め、振れ(イベント)は個社が決める。

これが26銘柄を貫く、このシリーズの最終結論です。

シリーズの歩き方(全記事リンク)

出典・手法: 株価・指数データはYahoo Finance、一株純資産は各社IR/決算短信・IRBANK。手法は当サイト「銘柄カルテ」共通の回帰による因子分解です。

※本記事は値動きの『クセ』の特性記述(教育目的)であり、特定銘柄の売買推奨・将来予測ではありません。

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