「AI相場」は日本株のどこに効いているのか — 前夜の米SOX指数で26銘柄を測る

銘柄カルテ

※本記事は教育・解説を目的としたものです。特定の売買を勧めたり、将来の値動きを断定したりするものではありません。約3.5年(2023-01〜2026-07)の統計にもとづく特性記述です(数値基準日: 2026-07-03)。
📖 統計用語(β・説明力・純固有・PBRなど)が分からなくなったら用語辞典へ。シリーズ全体の目次は銘柄カルテの歩き方へ。

「AI銘柄」という言葉をよく見ますが、AI相場は実際、日本株のどこに・どれだけ効いているのか。米フィラデルフィア半導体指数(SOX)の前夜の動きを「AI/半導体サイクルの体温計」として、6業種26銘柄への効き方を同じ物差しで測りました。

※時差の扱いが肝心です。「昨夜のSOX」と「今日の東京」を厳密に対応させると相関+0.50(東京エレクトロン)ですが、日付をズラさず同日で対応させると+0.12しかありません。海外指数との比較は暦合わせを間違えると結論ごと変わります別記事「1日の日付ずれが結論を3つ覆した話」もどうぞ)。

結果の地図:効き方は3段階だった

市場(日経)と為替の影響を取り除いた上で、前夜SOXがどれだけ追加の説明力を持つか(増分R²):

順位帯 銘柄(業種) SOX感応度β 増分説明力
正で効く 東京エレクトロン・ディスコ・アドバンテスト(半導体) +0.25〜+0.28 2.3〜2.9pt
逆に効く NTT・KDDI(通信) −0.08〜−0.09 2.5〜2.7pt
弱く逆 SUBARU・マツダ・トヨタ等(自動車)、日立(電機は正) −0.1前後 約1pt
無風 銀行3行・商社5社・パナソニック等 ≈0 0〜0.1pt

前夜SOXの増分説明力マップ

発見1:本丸は半導体装置——ただし「業種の動き」でほぼ代替できる

半導体装置3社はSOXに素直に正反応します(β+0.25〜0.28)。ただし別記事(半導体編)で見たとおり、同業4社の値動き(業種因子)がSOXの情報を先に運ぶため、業種因子込みのモデルにSOXを足して残る上乗せは東京エレクトロン・ディスコで+1pt弱、アドバンテスト・レーザーテックではゼロでした。「AIサイクルを見たいなら、SOXでも同業の株価でもほぼ同じ」です。

発見2:意外な第2位は「通信」——AIの夜の下げは、通信が受け皿

今回いちばん面白い発見です。NTT・KDDIはマイナスの感応度で、増分説明力は半導体に次ぐ2.5〜2.7pt。つまりSOXが崩れた夜の翌日は、通信株に資金が向かいやすい。「AI相場の裏側」には、ディフェンシブ(通信)への資金の往復運動が統計的にはっきり写っていました。「AI相場が終わると全部下がる」わけではなく、市場の中でシーソーが動くのです。

発見3:銀行・商社は「AI無風地帯」

銀行3行・商社5社の増分はほぼゼロ。AIサイクルの上下と(市場全体の連動を除けば)ほぼ無関係に動いています。ポートフォリオの中で「AIの波と関係ない部分」がどこかを知りたいとき、この地図はそのまま使えます。

「AI銘柄」という言葉への注意

このシリーズで「AI銘柄を分析しない」のには理由があります。AIはテーマであって業種ではないため、「AI銘柄」の括りでは同業比較(このシリーズの心臓部)が成立しません。今回のように「AIサイクルという因子が、各業種・各銘柄にどれだけ効くか」を測るほうが、誇張なしに実態へ近づけます。数字で見る限り、日本株における“AIの本丸”は半導体装置の3〜4銘柄に集中しており、その裏側に通信のシーソーがある——それが2023〜2026年の実像でした。

この回の持ち帰り

  1. テーマの効き方は測れる。「AI関連」の看板ではなく、感応度(β)と増分説明力で見る
  2. 正に効く先(半導体装置)と逆に効く先(通信)がある。テーマの波は市場内のシーソー
  3. 海外指数との比較は暦合わせが命。前夜整合を間違えると相関は1/4になる

出典・手法: 株価・指数データはYahoo Finance(SOX=^SOX)。手法は当サイト「銘柄カルテ」共通の回帰による因子分解(市場+為替を統制した上での前夜SOXの増分)です。

※本記事は値動きの『クセ』の特性記述(教育目的)であり、特定銘柄の売買推奨・将来予測ではありません。

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