銘柄カルテ用語辞典 — β・説明力(R²)・PBR・純固有をやさしく

※本記事は教育・解説を目的としたものです。特定の売買を勧めたり、将来の値動きを断定したりするものではありません。

「銘柄カルテ」シリーズでは、値動きを統計で読み解くためにいくつかの専門用語が出てきます。このページは、それらを具体例つきで一気に理解する辞典です。カルテを読んでいて言葉に詰まったら、ここに戻ってきてください。

β(ベータ)— 市場と“どれだけ一緒に動くか”

日経平均が1%動いたとき、その銘柄が平均何%動くかを表す数字です。

  • β=1.0 → 日経と同じだけ動く
  • β=1.6(東京エレクトロンなど半導体)→ 日経の1.6倍動く(値動きが激しい)
  • β=0.2(NTTなど通信)→ 日経が動いてもほとんど動かない(守りの銘柄)

「この銘柄は荒い/穏やか」を客観的な数字にしたもの、と考えてください。βが高い銘柄は上げ相場で稼ぎやすい反面、下げ相場では大きく削られます。

説明力(R²・アールにじょう)— “どれだけ説明できたか”の割合

その銘柄の値動きのうち、市場・為替・業種といった要因で何%を説明できたかを示す割合です。0〜100%で、100%に近いほど「お決まりの要因で動いている」ことになります。

  • R²=85%(メガバンク)→ 値動きの大半は市場・業種で説明でき、個性は小さい
  • R²=35%(ホンダ)→ 3分の1しか説明できず、残り3分の2はその銘柄独自の事情

R²が低い=分析が失敗、ではありません。「その銘柄には固有の物語が多い」という発見そのものです。

純固有(じゅんこゆう)— “その会社だけの事情”

値動きから市場・為替・業種の影響をすべて取り除いた後に残る、その会社だけの動きです。決算、不祥事、自社株買い、経営統合などがここに現れます。

たとえばホンダなら日産との統合サーガ、トヨタなら資本政策、東京エレクトロンなら決算と米中規制——純固有を見ると「その会社の3年半の物語」が浮かび上がります

純固有ドリフト — “じわじわの出遅れ/上振れ”

純固有のうち、単発のニュースでは説明できない、長期にわたるじわじわの傾向を指します。トヨタは市場・業種の想定に対して純固有ドリフトが大きくマイナス=「じわじわ出遅れた」、東京エレクトロンはプラス=「じわじわ買われた」。個々のニュースより、この基調のほうが株価の水準を大きく左右することが分かっています。

PBR(ピービーアール)— “純資産の何倍で買われているか”

株価 ÷ 一株あたり純資産(BPS)。会社を解散して資産を分けたときの価値(純資産)に対して、市場が何倍の値段をつけているかです。

  • PBR=2倍 → 帳簿価値の2倍で評価されている(期待が高い)
  • PBR=0.5倍 → 帳簿価値の半分(低評価)

純資産割れ — PBRが1倍を下回ること

PBRが1倍未満、つまり株価が「会社の解散価値」より安い状態です。日本の自動車株では常態化しており、日産はPBR0.2倍(純資産の2割)まで下がりました。「割安のサイン」に見えますが、市場がその低評価をつける理由(構造的な不安・低い資本効率)があることも多いため、単純に「安いから買い」とは読めません。カルテでは「なぜその倍率なのか」まで考えます。

業種ファクター — “同業みんなで一緒に動く分”

同じ業種の他社(トヨタなら日産・ホンダ・スズキ等)が共通して動く部分を取り出したものです。関税・EV転換・金利など「業界を丸ごと動かす事情」がここに入ります。

カルテの最大の発見は、「市場・為替で説明できない値動きの多くは、その銘柄固有ではなく“業種まるごと”の動きだった」ということ。ニュースを見たら「これは業種全体の話か、この会社だけの話か」を切り分ける——これがカルテ流の読み方の核心です。

円安メリット / 為替感応度

ドル円が円安に動いたとき株価が上がりやすい性質を「円安メリット」、その強さを数字にしたものが為替感応度(為替β)です。輸出・海外比率の高い自動車が代表格。ただし「輸出株=すべて円安メリット」ではなく、半導体装置のように為替がほとんど効かない業種もあります(カルテで実測しています)。

まとめ:カルテの読み方

  1. βで「荒いか穏やかか」を知る
  2. 説明力(R²)で「お決まりで動くか、個性が強いか」を知る
  3. 業種ファクターで「業界全体か、この会社だけか」を切り分ける
  4. 純固有(ドリフト)で「その会社だけの物語」を読む
  5. PBR / 純資産割れで「市場が払っている評価」を知る

この5つの物差しを持つと、日々の株価ニュースの解像度が一段上がります。各銘柄の実例は銘柄カルテ一覧からどうぞ。

出典・手法: 用語の定義は一般的な金融・統計の定義に基づき、数値例は当サイト「銘柄カルテ」の実測値です。

※本記事は値動きの読み方の教育的解説であり、特定銘柄の売買推奨・将来予測ではありません。

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