※本記事は教育・解説を目的としたものです。特定の売買を勧めたり、将来の値動きを断定したりするものではありません。約3.3年(2023〜2026年・約750〜860営業日/信頼度:中)の統計と出典付きの事実照合にもとづきます(数値基準日: 2026-07-04)。
📖 統計用語(β・説明力・純固有・PBRなど)が分からなくなったら用語辞典へ。シリーズ全体の目次は銘柄カルテの歩き方へ。
「銘柄カルテ」で測った26銘柄のうち、この期間に株価が下がったのは日産自動車(7201)ただ1社です(¥406→¥313)。日経平均が大きく上げた3年半に、何が起きていたのか。統計で解剖します。
① もし「因子どおり」なら株価は¥943だった
市場・為替・業種(自動車)の3因子で日産の日次の動きを積み上げると、期末の理論値は¥943。実際は¥313——3分の1です。この差(純固有ドリフト−117%、対数)は26銘柄で断トツのワースト(次点はマツダの−94%)でした。
- 日々の方向はよく説明できます(方向一致79%・ホールドアウト検証でも説明力57.0%/方向一致83.6%)
- つまり「日々は業種と一緒に動くのに、水準はじわじわと独り沈む」——出遅れ型の極端な形です

② 下落相場でだけ強く連動する「下に脆い」β
市場βは平均+0.84ですが、下落相場では+1.08、上昇相場では+0.75。トヨタやホンダでは消えていた非対称性が、日産でははっきり残ります。市場が下がる日は人一倍下がり、上がる日はついていけない——財務・業績不安を抱えた銘柄の典型的なクセです。市場・為替だけの説明力は24%と低く(26銘柄で最低水準)、業種因子(+29pt)を足してやっと53%。それでも半分近くは「日産だけの事情」で動きます(固有変動は年率35%=トヨタの1.5倍)。
③ 単日の主役は「資本政策サーガ」——歴史的急騰も、その後も
純固有の大変動日は上位15日の6割に出典付きの名前がつきました。並べると、そのままドラマの年表になります。
| 日付 | 比重 | ニュース |
|---|---|---|
| 2024-11-12 | +9.9% | エフィッシモ系ファンドが大株主(2.5%)に浮上・一時21%高(1974年以来) |
| 2024-12-18 | +19.5% | ホンダとの経営統合協議報道・救済期待で急騰(ホンダは同日−8%=完全な鏡像) |
| 2025-02-05 | −8.1% | 子会社化案を拒否し破談へ・単独再建への懸念 |
| 2025-02-21 | +8.2% | 「テスラに出資打診」FT報道で思惑買い |
| 2025-07-08 | −6.8% | CB¥1,500億など大型資金調達(計¥8,600億)・希薄化懸念 |
| 2026-02-13 | +6.9% | Q3営業黒字転換(+175億円)・再建進捗を好感 |
| 2026-02-17 | +5.5% | 通期営業損益を+500億円へ上方修正(黒字転換) |
| 2024-02-09 | −10.5% | Q3決算 通期下方修正で失望売り |
資本政策カテゴリの累積寄与は+22.8%——救済観測・アクティビスト・出資思惑は、単日では何度も株価を持ち上げました。

④ それでも全てを飲み込んだ「−134%の未命名ドリフト」
名前のつくイベントを全部足しても純固有の正味は+17%。残る−134%は、どの見出しにも帰せない“じわじわの信認低下”です。バリュエーションで見ると:
- 一株純資産(BPS)は+16%増えたのに、PBRは0.35→0.23へ圧縮(デレーティング−44%が下落の主因)
- 期間の100%で純資産割れ。現在のPBR 0.23は「帳簿上の解散価値の4分の1」で、26銘柄の最低値
ホンダ編で見た統合協議が「なぜ持ち上がったか」も、ホンダ株主が「なぜ救済を警戒したか」も、この数字が雄弁に語ります。

一方で直近には変化の芽も出ています。2026年2月の営業黒字転換と通期上方修正は、このシリーズの計測期間で初めて「決算が2連騰を生んだ」出来事でした(将来を保証するものではありません——リストラ費用・関税・資金コストなど重しは残っています)。
⑤ この銘柄の「読み方」
- 方向は業種、水準は固有。日々の上下は自動車セクターと連動するが、長期の水準は日産だけの信認問題で決まってきた
- 下に脆いβ(下落1.08/上昇0.75)。地合い悪化時に増幅されやすい構造
- 資本政策ニュースの瞬発力が大きい(±8〜20%)。ただし過去3年半は、単日の急騰が持続的な再評価につながらなかった
- PBR 0.23の意味を考える。割安のサインか、市場が織り込む再建リスクの値段か——答えは統計でなく今後の実績が出す
出典・手法: 株価データはYahoo Finance、一株純資産は各社IR/決算短信・IRBANK。個別ニュースの出典は本文表参照(Bloomberg・日経・FT・日産IR等)。手法は当サイト「銘柄カルテ」共通の回帰による因子分解です。
※本記事は値動きの『クセ』の特性記述(教育目的)であり、特定銘柄の売買推奨・将来予測ではありません。


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