NISAの非課税は結局いくら違うのか — 同じ売買をNISAと課税口座で3年半回して実測した

NISA

※本記事は教育・解説を目的とした過去データのシミュレーションであり、特定の売買や商品を勧めるものではなく、将来の結果を保証・予測するものでもありません。数値基準日: 2026-07-08。
📖 制度の基本(枠・簿価・損益通算)は前回の新NISAの仕組みを1ページで整理するへ。

「NISAは非課税だからおトク」とはよく聞きます。では具体的にいくら違うのか。当サイトの自作バックテストエンジン(NISAの年間投資枠をモデル化済み)で、まったく同じ売買ルールをNISA口座と課税口座(税率20.315%)の両方で走らせて、差額を実測しました。

実験の設計

  • 対象: 日経225連動ETF(1321)。個別株ではなく指数連動にして、制度の効果だけを見ます
  • 期間: 2023年1月〜2026年7月の約3年半、元手240万円(成長投資枠の年間上限と同額)
  • コスト: スプレッド0.22%を売買のつど控除
  • 違いは口座だけ: NISA(成長投資枠・年間240万円)か、課税口座(実現益に20.315%課税)か

シナリオA: 急落で買って1年保有 — 差は「税額そのまま」13.2万円

2024年8月5日、日経平均が1日で12%下げた歴史的急落の日に枠いっぱい(72口・約237万円)買い、約1年後に売る——という1回だけの売買です。

NISA 課税口座
実現益 651,979円 651,979円
支払税額 0円 132,449円
最終資産 3,051,979円 2,919,529円

売買がまったく同じなので、差額13.2万円=実現益65.2万円×20.315%、つまり税額がそのまま非課税の価値になりました。当たり前の結果ですが、この「当たり前」が成立するのは利益が出たときだけです。同じルールが下げ相場に当たれば実現益はゼロやマイナスになり、非課税の価値もゼロになります(損失なら課税口座でも税はかかりません。しかもNISAは損益通算ができないぶん、損失時はむしろ不利です)。

NISA vs 課税口座の資産推移比較

シナリオB: 回転売買では課税口座が逆転した

次に、移動平均クロス(25日/75日)で買いと売りを繰り返す回転売買を同じ条件で走らせました。結果は直感に反します。

NISA 課税口座
支払税額 0円 291,438円
最終資産 3,272,160円 3,402,126円

29万円も税金を払った課税口座のほうが、13万円上回りました。 原因は前回整理した制度の性質——年間投資枠は売却しても年内には戻らない——です。

取引ログを見ると、2023年9月にいったん枠いっぱい買って売ったあと、11月に買いシグナルが再び点灯します。課税口座は素直に約232万円分買い直せたのに対し、NISA口座は年間枠の残りが約1.9万円しかなく、1口も買えませんでした。そのまま2024年5月までの上昇(この区間で課税口座は約40万円の利益)を丸ごと取り逃しています。2024年10月の再エントリーでも、課税口座の55口に対しNISAは2口。非課税の利点を、機会損失が上回った形です。

念のため強調すると、これは「この期間・このルールでの一例」であり、回転売買が常に負けるという話ではありません。ただ、売買を繰り返すほど枠切れが起きやすくなるのはNISAの構造そのものです。年間360万円をほぼ使い切る前提の実験なので、投資額が枠より十分小さければこの問題は起きにくくなります。

この実測の限界(正直な注記)

自作エンジンの制約は隠さず書いておきます(データの罠シリーズの流儀です)。

  • 税は決済のつど計算しており、実際の課税口座で行われる年内の損益通算・繰越控除は未実装です。シナリオBでは課税口座の税を実際より多めに見積もっている(=逆転幅は実際にはもっと大きい)方向の簡略化です
  • ETFの分配金は未モデル。分配金非課税というNISAの利点が入っていないぶん、NISA側を過小評価する方向です
  • 生涯枠(簿価1,800万円)はこの規模では制約にならないため影響しません
  • 当初はTOPIX連動ETF(1306)で組みましたが、取得した株価データの2026年3月末に明らかな異常値(一時的に価格が1/10)を見つけ、1321に差し替えました。データはまず疑う、はここでも有効でした

この回の持ち帰り

  1. 非課税の価値は「実現益×20.315%」でしか生まれない。利益が出ない使い方では価値もゼロ
  2. 長期保有の1回売買では、差は素直に税額ぶん(今回の実測で13.2万円)
  3. 回転売買は枠と相性が悪い。枠切れの機会損失が非課税メリットを上回り、課税口座に逆転される場合すらある
  4. シミュレーションの前提と限界を確認してから数字を信じる

出典・手法: 株価データはYahoo Finance(1321、2023-01-04〜2026-07-08)。シミュレーションは当サイトの公開バックテストエンジン(設定ファイル config/nisa_sim_nisa.yaml / nisa_sim_taxable.yaml)によるもので、税率は申告分離課税20.315%(所得税・復興特別所得税・住民税)。制度の記述は金融庁公表資料に基づきます。

※本記事は過去データを用いた制度の仕組みの解説(教育目的)であり、特定銘柄・商品の売買推奨や将来の運用成果の予測・保証ではありません。

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