回帰分析で株価を「分解」するとは — 銘柄カルテの裏側をやさしく

株を学ぶ

※本記事は教育・解説を目的としたものです。特定の売買を勧めたり、将来の値動きを断定したりするものではありません。当サイトの銘柄分析(銘柄カルテ)の手法解説です。

銘柄カルテでは「トヨタの市場βは+0.9、為替βは+0.7」のような数字が出てきます。この数字を作っている回帰分析という道具を、数式を最小限に解説します。仕組みが分かると、カルテの表がぐっと読みやすくなるはずです。

発想:値動きを「レシピ」に分ける

ある銘柄の1日の値動きを、こう考えます。

今日の値動き = 市場の影響 + 為替の影響 + 業種の影響 + その会社固有の分

回帰分析がやるのは、過去数百日のデータから「この銘柄は市場が1%動くと平均何%動くのか」という係数(=β)を、それぞれの要因について見つけることです。

βは「感応度」の実測値

たとえば為替β=+0.7なら「円が1%安くなる日には、他の条件が同じなら株価が平均0.7%上がってきた」という過去の実測。誰かの意見ではなく、データが語る その銘柄の体質です。

大事な注意が2つあります。

  • βは平均の話。毎日きっちり0.7%動くわけではなく、あくまで「ならすとこれくらい」
  • βは変わる。事業構造や相場環境が変われば感応度も変わるため、定期的に測り直す前提の数字です

説明力R²=「何割を説明できたか」

回帰にはもう一つ大事な数字、R²(決定係数)があります。「市場・為替・業種で、この銘柄の日々の変動の何%を説明できたか」という成績表です。

当サイトの実測では、大型株のR²はおおむね6〜7割。つまり値動きの大半は「共通の波」で、残り3〜4割がその会社固有でした。この固有部分(残差)にこそ、決算・ニュース・その会社だけの再評価が詰まっています。カルテが固有部分を主役として観察するのはこのためです。

「当てはめすぎ」を防ぐ工夫

要因を増やすと、見かけの説明力R²は機械的に上がってしまいます。でもそれは過去へのこじつけ(過学習)かもしれない。そこで当サイトでは、モデルを作る期間と検証する期間を分け、モデルが見ていない直近90日で説明力を測り直します(ホールドアウト検証)。「過去に当てはまる」と「使える」は別物、という規律です。

それでも回帰は万能ではない

  • 極端な急変日(暴落・急騰)では平常時のβが効かないことがある
  • 要因どうしが似た動きをすると、係数の切り分けが不安定になる
  • そして何より、入力データが間違っていれば結果も全部間違う日付ずれで結論が覆った話は当サイトの実体験です)

持ち帰り

  1. 回帰分析=値動きを「共通の波+固有」に分ける道具。βは感応度の実測値
  2. R²は説明できた割合。大型株でも3〜4割は「その会社固有」が残る
  3. 見ていないデータで検証して初めて信用する。そしてデータそのものを疑う

出典・手法: 株価・為替データはYahoo Finance。手法は当サイト「銘柄カルテ」共通の回帰による因子分解です。

※本記事は教育目的の解説であり、特定銘柄の売買推奨・将来予測ではありません。

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