「金利が上がると不動産株は下がる」は本当だったか — 大手5社を統計で測る

銘柄カルテ

※本記事は教育・解説を目的としたものです。特定の売買を勧めたり、将来の値動きを断定したりするものではありません。約3.5年(2023-01〜2026-07)の統計にもとづく特性記述です(数値基準日: 2026-07-10)。
📖 統計用語(β・説明力・純固有など)が分からなくなったら用語辞典へ。シリーズ全体の目次は銘柄カルテの歩き方へ。

セクターマップ第12弾は不動産大手5社。教科書には「金利が上がると、借入コスト増と利回り面の魅力低下で不動産株には逆風」と書かれています。銀行編で見たとおり、この3年半はまさに金利正常化の期間——なら不動産株は下がったのか? いつもの物差しで確かめます。

5社の一覧表

市場β 為替β 業種β 説明力R² 純固有ドリフト 期間リターン 直近1年
住友不動産 +0.83 +0.02 +1.00 69% +21% +161% +37%
三菱地所 +0.72 −0.00 +0.85 65% +31% +157% +54%
東急不動産HD +0.67 +0.10 +0.81 70% +25% +135% +32%
三井不動産 +0.72 +0.09 +0.95 73% +6% +106% +10%
野村不動産HD +0.52 +0.24 +0.76 65% +13% +87% +14%

不動産5社の純固有ドリフト

発見1:教科書の「金利上昇=不動産株安」は、この期間成立しなかった

結果は表のとおり、5社そろって+87〜161%。金利正常化が進んだ3年半で、逆風どころか大幅高でした。銀行(金利メリット)と不動産(金利デメリットのはず)が同時に上がったわけです。

命題が間違いというより、「金利だけを見る単純化」が危ういのだと思います。金利が上がった背景にはインフレと賃料・地価の上昇があり、保有不動産の含み益や賃料収入も同時に膨らむ。低PBR是正の還元強化も乗る。教科書の一対一対応(金利↑→不動産↓)は、他の条件が動かない前提の話であって、現実は他の条件こそ大きく動いた——という整理が実測と整合的です。

発見2:為替βがほぼゼロ — シリーズで最も「純内需」な業種

為替βは−0.00〜+0.24で、実質的にゼロが並びました。エネルギー編(+0.25〜+0.46)や小売編(+0.61〜−0.89で大割れ)と比べると、円相場のニュースにほぼ無反応という珍しい業種です。国内の土地と建物が資産の中心なので直感にも合いますが、「為替を気にしなくていい日本株」が実測で確認できたのはこのシリーズで初めてです。

発見3:業種のまとまりは銀行に次ぐ強さ

説明力R²は65〜73%、業種βは+0.76〜+1.00。銀行3行(R²78〜82%)ほどではないものの、5社はかなり一体で動きます。住友不動産の業種β+1.00は「業種の波にそのまま乗る」感応度。金利観測・REIT市況・地価動向といった共通材料が、5社を同じ日に同じ方向へ動かしています。

発見4:個社差は「純固有」に静かに出る — 三菱地所+31% vs 三井不動産+6%

業種一体とはいえ、因子で説明できない上振れ(純固有ドリフト)には5倍の開きがあります。三菱地所の+31%に対し、三井不動産は+6%とほぼ因子どおり。純固有どうしのペア相関は平均−0.21で、個社の物語はそれぞれ独立に起きている——業種でまとめて捉えたうえで、個社差は純固有で見る、という当シリーズの読み方がきれいに当てはまる業種です。

この回の持ち帰り

  1. 「金利上昇=不動産株安」はこの3年半は不成立(5社とも+87〜161%)。一対一対応の教科書命題は他の条件が動くと簡単に崩れる
  2. 為替βほぼゼロ。シリーズ初の「純内需」業種で、円相場のニュースとは実測上ほぼ無縁
  3. 業種のまとまりは銀行に次ぐ(R²65〜73%)。まず「業種を持つか」、次に個社差は純固有で
  4. 過去の関係は将来の保証にならない。金利と不動産の関係も「期間による」が実測の答え

出典・手法: 株価データはYahoo Finance。手法は当サイト「銘柄カルテ」共通の回帰による因子分解です(本業種は純資産系指標を未収録のためPBR比較は今後の深掘りで扱います)。

※本記事は値動きの『クセ』の特性記述(教育目的)であり、特定銘柄の売買推奨・将来予測ではありません。

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