通信3社を同じ物差しで測ったら — 市場β0.2、「守りの銘柄」の統計的実像

銘柄カルテ

※本記事は教育・解説を目的としたものです。特定の売買を勧めたり、将来の値動きを断定したりするものではありません。約3.5年(2023-01〜2026-07)の統計にもとづく特性記述です(数値基準日: 2026-07-03)。
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シリーズ最後の業種は通信(NTT・KDDI・ソフトバンク)。よく「ディフェンシブ(守り)」と言われますが、それは統計的にどれくらい本当なのか。測ってみると、6業種でもっとも異質な数字が出ました。

3社の一覧表

市場β 業種β 説明力R² 純固有ドリフト PBR現在(レンジ)
NTT +0.19 +0.66 42% −24% 1.20(1.19〜1.90)
KDDI +0.23 +0.95 48% +12% 1.99(1.67〜2.21)
ソフトバンク +0.23 +0.52 39% +15% 3.34(3.16〜4.46)

通信3社の純固有ドリフトとPBR

発見1:市場βは0.2——「日経が1%動いても0.2%しか動かない」

半導体のβは1.6〜1.8、自動車は0.7〜1.0。通信は0.19〜0.23で、市場が急落する日も急騰する日も、値動きの8割は日経平均と無関係です。「ディフェンシブ」という言葉の中身を数字にすると、これほど極端だったのかというのが正直な感想です。

しかもAI相場の地図編で見たとおり、NTT・KDDIはAIサイクル(前夜のSOX指数)と逆相関——半導体が崩れた夜の翌日に買われやすい、市場内の“避難先”としての顔も統計に写っていました。

発見2:低βでも「業種のまとまり」はある

面白いのは、市場との連動は弱いのに、3社どうしはそれなりに連動する(業種β0.52〜0.95)ことです。値下げ圧力・政策・通信障害といった業界共通の材料では3社まとめて動く。「市場からは独立、業界内では連帯」という、電機とは正反対の構造です。

発見3:純固有はNTTだけマイナス

純固有ドリフトはKDDI+12%・ソフトバンク+15%に対し、NTTは−24%。業種・市場の想定に対して独り出遅れました。政府保有株の売出し観測や国民的な値下げ圧力の的になりやすい立場など、NTT固有の重しが数字に出た形です(個別の帰属は今後のカルテ深掘りで)。

発見4:PBRの意味が業種内でまるで違う

NTT 1.20、KDDI 1.99、ソフトバンク3.34。同じ通信でも、ソフトバンクは高配当を維持する株主還元マシンとして「利回りの値段」がつき、帳簿価値の3倍超で評価されています。PBRは業種内でも「何にお金を払っているか」で水準が変わる——自動車(0.2〜1.1)とも半導体(15〜45)とも違う、第3の世界です。

この回の持ち帰り

  1. 「守り」の実像はβ0.2。相場の急変時に動かないのは気のせいではなく構造
  2. 避難先としての顔:AI相場と逆相関(半導体と組み合わせるとシーソーになる)
  3. 低β=安全ではない:NTTのように業種・市場と無関係に独り出遅れる(純固有−24%)ことはある
  4. これで全6業種・26銘柄を測り終えました。次回、総まとめ「日本株の宿命マップ」

出典・手法: 株価・指数データはYahoo Finance、一株純資産は各社IR/決算短信・IRBANK(分割調整済み)。手法は当サイト「銘柄カルテ」共通の回帰による因子分解です。

※本記事は値動きの『クセ』の特性記述(教育目的)であり、特定銘柄の売買推奨・将来予測ではありません。

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