電機5社を同じ物差しで測ったら — 「電機」という業種は、もう存在しなかった

銘柄カルテ

※本記事は教育・解説を目的としたものです。特定の売買を勧めたり、将来の値動きを断定したりするものではありません。約3.5年(2023-01〜2026-07)の統計にもとづく特性記述です(数値基準日: 2026-07-03)。
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ソニー・パナソニック・日立・三菱電機・富士通。証券コード上はどれも「電気機器」です。ところが同じ物差し(市場・為替 → 業種 → 純固有)で測ると、この5社を1つの業種として扱うこと自体に無理があることが数字で見えてきました。

5社の一覧表

市場β 業種β 説明力R² 純固有ドリフト PBR現在(レンジ) 純資産割れの日
日立製作所 +1.13 +0.44 48% −1% 3.08(1.42〜4.56) 0%
三菱電機 +0.99 +0.14 45% +51% 2.75(0.91〜3.40) 2%
ソニーグループ +0.92 +0.27 38% −46% 2.36(1.82〜3.58) 0%
パナソニックHD +0.89 +0.17 35% +50% 2.14(0.51〜2.14) 73%
富士通 +0.76 +0.37 29% −22% 2.77(1.99〜4.73) 0%

電機5社の純固有ドリフトとPBR

発見1:業種の「まとまり」が全業種で最弱

同業4社の共通の動き(業種因子)への感応度は+0.14〜+0.44。銀行(0.86〜0.91)や自動車(0.5〜1.1)の半分以下で、モデル全体の説明力も29〜48%と6業種で最低です。つまり——お互いにほとんど連動していない

理由は事業を見れば明らかです。ゲーム・音楽・映画のソニー、車載電池と構造改革のパナソニック、重電・インフラ・ITの日立と三菱電機、ITサービスの富士通。「電機」は東証の分類上の名前であって、経済的な業種ではもうないのです。

発見2:純固有は「真っ二つ」——同じ業種で+51%と−46%が同居

因子想定との差(純固有ドリフト)は、三菱電機+51%・パナソニック+50%に対し、ソニー−46%・富士通−22%。自動車(全員マイナス)や商社(全員プラス)のような「業種の宿命」が、電機には存在しません。宿命が無い=銘柄選びの結果がそのまま出る、もっとも個社勝負の領域です。

発見3:隠れた「劇的な卒業」——パナソニック

PBRのレンジに注目すると、パナソニックだけ0.51〜2.14と異様に広く、期間の73%は純資産割れでした。それが現在は2.14と期間最高値圏。構造改革・電池事業の再評価で、銀行や住友商事と並ぶ“純資産割れ卒業”組です。同じ表の中に、一度も割れていない日立(最低1.42)と、7割の期間割れていたパナソニックが同居している——これが「電機」の実態です。

発見4:日立は「市場そのもの」になった

日立の市場βは+1.13と5社で最高、純固有ドリフトはほぼゼロ(−1%)。指数への影響も大きく、日経平均と一緒に動き、因子想定どおりに着地した——良くも悪くも「日本株の顔」的な値動きでした。個性の強い他の4社と対照的です。

この回の持ち帰り

  1. 証券コードの業種分類を信じない。「電機セクターが強い/弱い」という言説は、この5社にはほぼ無意味
  2. 宿命なき業種は個社勝負。同じ分類で+51%と−46%が同居する
  3. PBRレンジの広さは「変身中」のサイン(パナソニック0.51→2.14)
  4. 同業比較をするなら、分類ではなく「実際に連動しているか」(業種β)を確かめてから

出典・手法: 株価データはYahoo Finance、一株純資産は各社IR/決算短信・IRBANK(分割調整済み)。手法は当サイト「銘柄カルテ」共通の回帰による因子分解です。

※本記事は値動きの『クセ』の特性記述(教育目的)であり、特定銘柄の売買推奨・将来予測ではありません。

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