分散は何銘柄から効くのか — 大型株20銘柄で「ブレの減り方」を実測する

株を学ぶ

「銘柄を分散するとリスクが下がる」——ほぼすべての入門書に書かれていることです。では、何銘柄に分ければ、どれだけ下がるのか。10銘柄と20銘柄では違うのか。実際の株価で数えてみました。

業種を散らした大型株20銘柄について、N銘柄を等金額で持つ組み合わせをランダムに300通りずつ作り、それぞれの値動きのブレ(年率ボラティリティ)を計算しています。対象は2016年1月から2026年8月14日までの2,614営業日です。

※本記事は教育・解説を目的としたものです。特定の銘柄・ポートフォリオを推奨するものではなく、将来の値動きを予測するものでもありません。

① 「ブレ」の測り方

年率ボラティリティは、日々の値動き(前日比%)のばらつきを1年あたりに換算した数字です。20%なら「1年でおよそ±20%程度は上下しうる」という幅の目安になります。

大きいほど値動きが荒く、小さいほど穏やか——それだけの指標で、上がるか下がるかとは無関係です。ここが最初の注意点です。ブレが小さいことは、儲かることでも損しないことでもありません(回帰分析で株価を「分解」するとはで使っているβと同じ考え方の物差しです)。

② まず1銘柄ずつ

20銘柄を単独で持った場合の年率ボラティリティです(低い順に抜粋)。

銘柄 年率ボラ
NTT 20.3%
日本たばこ産業 21.0%
KDDI 22.7%
武田薬品 23.3%
…(中略)…
ファーストリテイリング 32.9%
日立製作所 34.9%
村田製作所 38.6%

同じ「日本の大型株」でも、いちばん穏やかなNTT(20.3%)といちばん荒い村田製作所(38.6%)で2倍近い開きがあります。20銘柄の平均は28.4%でした。

③ 銘柄数を増やすとどうなるか

何銘柄に分けると値動きのブレはどこまで減るか

持つ銘柄数 平均ボラ 組み合わせによる幅
1 28.4% 20.3〜38.6%
2 23.9% 17.1〜31.5%
3 22.1% 16.9〜27.6%
5 20.8% 17.3〜25.5%
10 19.4% 17.2〜22.5%
15 19.1% 17.8〜20.7%
20 18.8% (1通りのみ)

下がり方が均等ではないのが要点です。

  • 1銘柄 → 5銘柄で、ブレは28.4%から20.8%へ。1銘柄のブレの26.6%ぶんが消えました
  • 5銘柄 → 20銘柄では20.8%から18.8%へ。追加で消えたのは7.1%ぶんだけ

効果の大半は最初の数銘柄で出ています。5銘柄目までに得られた効果を、そのあと15銘柄増やしても4分の1しか上乗せできませんでした。

④ 何銘柄持っても消えないブレ

グラフの線は、右へ行くほど平らになって18〜19%あたりで止まります。ここが「分散では消せない部分」です。

個別の事情(1社の決算、不祥事、新製品)はバラバラなので、銘柄を混ぜれば打ち消し合います。しかし全体に効く材料——金利、為替、世界の景気——は全銘柄に同じ向きに効くため、何銘柄に分けても残ります。相場全体が下げる日に「20銘柄に分けていたから下がらなかった」ということは起きません。

もう一つ、組み合わせによる幅の縮み方も見どころです。1銘柄では選び方次第で20.3〜38.6%と大きく振れますが、10銘柄では17.2〜22.5%、19銘柄では18.5〜19.3%までしぼられます。銘柄数が増えるほど、「何を選んだか」が結果に効かなくなるという意味でもあります。

⑤ 日経平均より低かった

比較のために同じ期間の日経平均を測ると、年率ボラは21.6%でした。20銘柄を等金額で持った場合の18.8%より高いという結果です。

「指数のほうが分散されているのに?」と思うところですが、日経平均は株価の高い銘柄ほど影響が大きくなる仕組み(株価平均型)の指数です。構成銘柄は225ありますが、値がさ株の値動きが指数を大きく動かすため、等金額で20銘柄に分けたほうが均されることがあります。銘柄数=分散の度合いではないという例です。

⑥ この実測の限界

  1. ブレはリターンではありません。ボラティリティが下がっても、成績が良くなるとは限りません
  2. 業種を散らした20銘柄という条件つきです。同業種に偏らせれば、同じ銘柄数でも効果は小さくなります
  3. 等金額・日々リバランス前提の計算です。実際には売買コストがかかります
  4. 2016年以降の相場での測定です。相関の強さは時期によって変わり、暴落時には全銘柄の相関が上がる傾向が知られています
  5. 20銘柄を実際に持つには資金も管理の手間もかかります。この試算はその負担を測っていません

⑦ 記録から言えること

  1. 1銘柄の平均ボラは28.4%、20銘柄なら18.8%。分散でブレは確かに下がりました
  2. 効果の大半は最初の5銘柄。5銘柄で26.6%ぶん、そこから15銘柄足しても7.1%ぶんの上乗せでした
  3. 18〜19%は消えません。市場全体に効く材料は分散では打ち消せません
  4. 銘柄数が増えるほど「何を選んだか」の影響は小さくなります。1銘柄では20〜39%、19銘柄では18.5〜19.3%
  5. 等金額20銘柄は日経平均(21.6%)よりブレが小さい。指数だから分散が効いている、とは限りません

出典・手法: 各社の株価(終値)および日経平均株価(^N225)はYahoo Financeより取得し、当サイトが集計(2026-08-16実行、対象は2016-01-05〜2026-08-14の2,614営業日)。年率ボラティリティは日次リターンの標準偏差×√250。N銘柄の組み合わせは各Nについて最大300通りをランダム抽出しています(乱数は固定シードで再現可能)。集計スクリプトはリポジトリの scripts/diversification.py として公開しています。

※本記事は過去データの集計(教育目的)であり、特定の銘柄・ポートフォリオの推奨や将来の値動きの予測ではありません。過去の傾向が今後も続くことを示すものではありません。


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