生存者バイアス — 「勝った人の話」だけ聞くと判断を誤る

株を学ぶ

※本記事は教育・解説を目的としたものです。特定の売買を勧めたり、将来の値動きを断定したりするものではありません。データの読み方を学ぶ「データの罠」シリーズです。

第二次大戦中、帰還した爆撃機の被弾箇所を調べて装甲を厚くする計画に、統計学者ウォルドはこう指摘しました。「穴の開いていない場所を守れ。そこを撃たれた機体は帰ってこなかったのだから」。見えているデータが「生き残ったものだけ」に偏っている——これが生存者バイアスです。

投資の世界は生存者バイアスだらけ

  • 成功した投資家の本:同じ手法で退場した多数の人は本を書かない。棚に並ぶのは定義上ほぼ「生存者」だけ
  • 「10年で10倍になった株」の特集:その裏に、消えていった銘柄・低迷し続けた銘柄が大量にある
  • 好成績の投資信託:成績の悪いファンドは償還・統合されて消えるため、「現存ファンドの平均成績」は実態より良く見える

株価指数も「生存者の集まり」

見落とされがちですが、日経平均やS&P500も定期的に構成銘柄を入れ替えています。業績が悪化した企業は除外され、勢いのある企業が採用される。つまり指数の長期チャートには「選手を入れ替え続けたチーム」の成績という側面があります。個別株を1銘柄買って持ち続けることとは、前提が違うのです。

分析でも同じ罠にはまる

当サイトの銘柄カルテは現在、大型の主要銘柄を対象にしています。これも正直に言えば一種の生存者スクリーンです——今日「主要銘柄」でいられた会社しか観察していません。「大型株のR²は6〜7割」という当サイトの実測値も、「生き残って大型であり続けた銘柄では」という限定付きで読むのが正確です。

過去データで投資ルールを検証(バックテスト)するときはさらに深刻で、「現在の上場銘柄リスト」で過去を検証すると、上場廃止になった銘柄が最初から存在しないことになり、成績が実態より良く出ます

自衛のチェックリスト

  1. 「見えていないデータは何か」を最初に問う。成功例の裏の失敗例の数を想像する
  2. 分母を確認する。「この手法で勝った人がいる」ではなく「試した人のうち何%が勝ったか」
  3. 指数と個別株を混同しない。指数の長期上昇は銘柄入替の効果込み
  4. 過去検証の成績は「当時その銘柄を選べたか?」と自問して割り引く

持ち帰り

成功談は嘘をついていなくても、沈黙している失敗談の分だけ全体像は歪みます。派手な成功例を見たら「帰ってこなかった爆撃機」を思い出す——それだけで、情報への耐性は大きく変わります。

出典・手法: 株価データはYahoo Finance。手法は当サイト「銘柄カルテ」共通の回帰による因子分解です。

※本記事は教育目的の解説であり、特定銘柄の売買推奨・将来予測ではありません。

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