機械6社を同じ物差しで測ったら — 三菱重工+769%、防衛の再評価は「純固有」に出た

銘柄カルテ

※本記事は教育・解説を目的としたものです。特定の売買を勧めたり、将来の値動きを断定したりするものではありません。約3.5年(2023-01〜2026-07)の統計にもとづく特性記述です(数値基準日: 2026-07-09)。
📖 統計用語(β・説明力・純固有など)が分からなくなったら用語辞典へ。シリーズ全体の目次は銘柄カルテの歩き方へ。

セクターマップ第9弾は機械6社。この3年半の日本株で最も劇的な上昇を演じた業種を含みます——三菱重工の期間リターンは+769%、IHIは+559%。この歴史的な上げは「相場の追い風」だったのか、「その会社固有の再評価」だったのか。物差しを当てると、答えははっきり出ました。

6社の一覧表

市場β 為替β 業種β 説明力R² 純固有ドリフト 期間リターン 直近1年
三菱重工 +0.99 +0.22 +0.87 37% +116% +769% +14%
IHI +1.02 +0.34 +0.82 31% +81% +559% +39%
コマツ +0.91 +0.25 +0.54 50% +13% +186% +51%
クボタ +0.80 +0.06 +0.39 40% −21% +73% +79%
ダイキン +0.78 0.00 +0.22 32% −42% +39% +62%
SMC +1.14 −0.09 +0.19 48% −71% +42% +43%

機械6社の純固有ドリフト

発見1:防衛の再評価は「純固有」として観測された

三菱重工の純固有ドリフトは+116%(対数累積)、IHIは+81%。当シリーズで測った約40銘柄の中で、プラス側の最大値です。

背景は明確で、政府が2023〜2025年度の防衛費を従来の約1.6倍・総額43兆円に増額し、三菱重工の防衛・宇宙事業の受注は増額前の3倍超に拡大(出典: 東洋経済オンライン、日本経済新聞)。この「国策による事業構造の変化」は、市場全体でも円安でもなく、その会社固有の再評価として株価に刻まれました。医薬品の回で見た「期待の剥落=純固有−100%」のちょうど鏡像——期待の形成=純固有+100%です。

発見2:同じ「機械」でも、乗っている波が別物

一方で同じ業種の中に、SMC−71%・ダイキン−42%という大きなマイナスも同居しています。SMCは半導体製造装置向け、ダイキンは空調——防衛とはまったく別の景気循環で動く会社です。業種βを見ても、防衛2社は+0.82〜0.87と高いのに、SMC・ダイキンは+0.19〜0.22しかない。「機械」という括りの中に、実質的には別の業種が複数入っていることが数字に出ています。

セクター分類あるある、のこぼれ話も一つ。ファナック(工作機械のイメージ)は東証の分類では「電気機器」、川崎重工(重工3社の一角)は「輸送用機器」。直感の業種と公式の分類はよくズレるので、業種で銘柄を探すときは分類表を一度確認しておくと迷いません。

発見3:景気敏感の教科書通り、市場βは全業種で最高クラス

市場βは0.78〜1.14。日経平均が1%動くと同じかそれ以上動く体質で、食品の回(β0.09〜0.66)と正反対です。説明力R²もコマツ50%・SMC48%と、ディフェンシブ業種よりずっと高い。「景気敏感株」の名の通り、相場の波にしっかり乗って動く業種です(セクターローテーションの回の実測版)。

発見4:それでも急騰の主因は「固有」だった

面白いのはここです。市場感応度が高い業種なのに、三菱重工の+769%を分解すると、市場や円安が運んだ分を純固有+116%が大きく上回る。つまり「日経の上げ相場に乗った」だけでは、この上昇の半分も説明できません。大相場の主役は、業種のβではなくその会社の物語でした。

この回の持ち帰り

  1. 国策による事業の再評価は「純固有」に現れる(三菱重工+116%、IHI+81%)
  2. 業種ラベルを信じすぎない。「機械」の中には防衛・半導体・空調という別々の生態系が同居
  3. 機械は市場β・R²とも高い景気敏感の教科書銘柄。ただし歴史的な急騰の主因は固有だった
  4. 純固有の巨大プラスは巨大マイナス(医薬品の回)と裏表。期待の行き先は事後にしか分からない

出典・手法: 株価データはYahoo Finance。防衛費・受注動向の出典は東洋経済オンライン・日本経済新聞等の報道。手法は当サイト「銘柄カルテ」共通の回帰による因子分解です(純資産系指標は今後の深掘りで扱います)。

※本記事は値動きの『クセ』の特性記述(教育目的)であり、特定銘柄の売買推奨・将来予測ではありません。

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