食品6社を同じ物差しで測ったら — 「守りの業種」は本当か、数字で確かめた

銘柄カルテ

※本記事は教育・解説を目的としたものです。特定の売買を勧めたり、将来の値動きを断定したりするものではありません。約3.5年(2023-01〜2026-07)の統計にもとづく特性記述です(数値基準日: 2026-07-09)。
📖 統計用語(β・説明力・純固有など)が分からなくなったら用語辞典へ。シリーズ全体の目次は銘柄カルテの歩き方へ。

自動車・半導体・銀行・商社・電機・通信に続き、第7弾は食品6社。「食品はディフェンシブ(守りの銘柄)」という教科書の定番(詳しくは株を学ぶのセクターローテーションの回で扱います)を、いつもの物差し「市場・為替 → 業種 → 純固有」で検証します。

6社の一覧表

市場β 為替β 業種β 説明力R² 純固有ドリフト 期間リターン 直近1年
味の素 +0.66 +0.24 +0.34 27% +42% +208% +51%
キリンHD +0.22 +0.06 +0.69 35% +29% +64% +49%
明治HD +0.09 −0.02 +0.58 22% +17% +27% +28%
アサヒGHD +0.24 +0.29 +0.69 29% −4% +27% −15%
キッコーマン +0.44 +0.30 +0.65 28% −24% +29% +32%
日清食品HD +0.22 +0.04 +0.85 30% −30% −10% +4%

食品6社の純固有ドリフト

発見1:説明力R²が2〜3割——7業種で最低

これまで測った業種は、市場・為替・業種因子で値動きの5〜7割を説明できました。食品は22〜35%。つまり食品株の値動きの7割前後は「その会社固有」です。

これは「ディフェンシブ」の実測的な正体でもあります。市場βは0.09〜0.66と低く(明治の0.09は、当シリーズで測った中で最小級——日経平均がどう動いてもほぼ無反応)、相場全体の波にほとんど乗っていない。だから暴落時に値持ちしやすい一方、上げ相場にも乗り遅れる。教科書の記述が、βの実測できれいに裏付けられました。

発見2:それでも「食品どうし」は連動する

市場との縁は薄いのに、業種βは+0.34〜+0.85としっかりあります。原材料コスト・値上げの浸透・インバウンド消費など、食品業界に共通の材料では6社が一緒に動く。「日経とは別の生態系で、業界内では連動する」——これが食品セクターの構造です。

発見3:主役は個社の物語——味の素+42%と日清−30%

純固有ドリフトは+42%から−30%まで、業種内でくっきり明暗が分かれました。トップの味の素は期間リターン+208%。調味料の会社でありながら、半導体材料など「食品の外」の事業でも語られる銘柄で、因子の想定を大きく上回って買われ続けました(直近の急落は相場解説で扱っています)。一方の日清食品は−30%と、業種の中で最も因子想定を下回りました。

守りの業種を選んでも、どの1社を持つかで結果がまるで違う——R²が低い(=固有が大きい)業種ほど、この銘柄間格差が出やすくなります。

発見4:アサヒの直近1年だけがマイナス——固有リスクの実例

直近1年のリターンでただ1社マイナス(−15%)なのがアサヒGHD。2025年9月末にランサムウェアによるサイバー攻撃で受注・出荷が停止し、主要工場の稼働停止・決算開示の延期にまで至った事案が重くのしかかりました(出典: 日本経済新聞、アサヒグループHD開示)。市場全体とは無関係に1社を直撃する——まさに「純固有リスク」の教科書的な実例で、分散の大切さ(リスク管理の回)を思い出させます。

この回の持ち帰り

  1. 「食品=守り」は実測でも本当。市場βが低く、値動きの7割は市場と無関係
  2. ただし守りの業種ほど個社の選択がすべて(純固有+42%〜−30%の大差)
  3. 業種内の連動は健在。食品は「日経とは別の生態系」で動く
  4. サイバー攻撃のような固有リスクは統計では予見できない。分散だけが備え

出典・手法: 株価データはYahoo Finance。イベントの出典は日本経済新聞・各社開示。手法は当サイト「銘柄カルテ」共通の回帰による因子分解です(本業種は純資産系指標を未収録のためPBR比較は今後の深掘りで扱います)。

※本記事は値動きの『クセ』の特性記述(教育目的)であり、特定銘柄の売買推奨・将来予測ではありません。

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