※本記事は教育・解説を目的としたものです。特定の売買を勧めたり、将来の値動きを断定したりするものではありません(数値基準日: 2026-07-03)。
📖 統計用語(β・説明力・純固有・PBRなど)が分からなくなったら用語辞典へ。シリーズ全体の目次は銘柄カルテの歩き方へ。
前回①では、トヨタの値動きのうち市場(日経平均)と為替(ドル円)で説明できるのは約42%にとどまる、という話をしました。今回は残り6割の「正体」を探ります。
同業5社の「共通の動き」を因子にする
ホンダ・日産・スズキ・SUBARU・マツダの5社を等ウェイトで束ねたバスケットから、市場・為替と重なる部分を取り除いた「業種因子」を作り、トヨタの回帰に追加します。すると:
| モデル | 説明力 R² |
|---|---|
| 市場+為替 | 41.9% |
| +業種(自動車) | 64.6% |
| 業種の増分 | +22.7pt(業種β +0.66・有意) |
説明力が一気に23ポイント近く跳ね上がりました。 「市場・為替で説明できない6割」の半分近くは、トヨタ固有ではなく“自動車業種全体”が一緒に動いていたのです。関税、国内販売の落ち込み、EV転換への懸念——業界を丸ごと動かす材料がここに入ります。
大切な注意:「連動の強さ」≠「最終的な上げ下げ」
業種因子は「一緒に揺れる強さ」(分散の説明力)では最大の追加要因ですが、期間を通した“累積の押し上げ/押し下げ”はほぼゼロでした。トヨタはこの期間、おおむね業種平均並みに動いたということです。
「相関が強い」ことと「そのおかげで上がった/下がった」ことは別物——これはこのシリーズ全体を貫く、最も誤解されやすいポイントです。
ニュースの読み方が変わる
この発見の実用的な意味は、ニュースを見たときの問いが変わることです。
- 「関税で自動車株全滅」→ 業種の話(トヨタ固有ではない)
- 「トヨタ、認証不正で生産停止」→ トヨタ固有の話
- 「日経平均が大幅高」→ 市場の話
「これは業界全体か、この会社だけか」を切り分ける癖をつけると、株価ニュースの解像度が一段上がります。
この回の持ち帰り
- 市場・為替に業種因子を足すと、トヨタの説明力は 42%→65%
- ただし業種は「揺れの説明」であって「累積リターンの源泉」ではなかった
- 次回③:残った純固有(トヨタだけの事情)をニュースに振り分け、それぞれの「比重」を測ります
シリーズ: ①3層で読む → ②業種因子(本記事)→ ③ニュースの比重 | 銘柄カルテ一覧
出典・手法: 株価・為替データはYahoo Finance、純資産・決算は各社IR/決算短信・IRBANK。手法は当サイト「銘柄カルテ」共通の回帰による因子分解です。
※本記事は値動きの『クセ』の特性記述(教育目的)であり、特定銘柄の売買推奨・将来予測ではありません。


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