年末になると「今年いちばん上がった銘柄」のランキングが出ます。それを見て翌年の候補を考える——自然な発想です。実際、その方法はどのくらい効いたのでしょうか。
業種を散らした大型株20銘柄について、各年の年間リターン(配当込み)で毎年1位から20位まで順位をつけ、前年の順位が翌年にどれだけ引き継がれたかを、2015年から2025年までの10組で数えました。
結論から書きます。前年トップ5の翌年平均順位は20銘柄中10.7位でした。順位をくじ引きで決めた場合の期待値は10.5位です。
※本記事は教育・解説を目的としたものです。特定の銘柄の売買を推奨するものではなく、将来の値動きを予測するものでもありません。
① 測り方
対象は、業種を散らした大型株20銘柄(自動車・電機・通信・銀行・商社・医薬・保険・小売・不動産・鉄道など)。配当込みのリターンで比べるため、株価は配当を反映した調整後終値を使い、各年の年末値から年間リターンを計算しました。
そのうえで2つの角度から見ます。
- 順位相関:前年の順位と翌年の順位がどれだけ揃っているか。+1なら完全に同じ並び、0なら無関係、−1なら完全に逆順
- 前年トップ5の翌年順位:前年に上位5銘柄だったものが、翌年に平均何位になったか
順位に持続性があるなら、①は毎年プラスに偏り、②は10.5位よりはっきり上位(小さい数字)に寄るはずです。
② 順位相関 — プラスは10回中4回

| 前年 → 翌年 | 順位相関 | 前年トップ5の翌年平均順位 | うち翌年も上位半分 |
|---|---|---|---|
| 2015 → 2016 | −0.33 | 14.6位 | 1/5 |
| 2016 → 2017 | +0.40 | 6.4位 | 5/5 |
| 2017 → 2018 | −0.11 | 9.2位 | 3/5 |
| 2018 → 2019 | 0.00 | 11.4位 | 2/5 |
| 2019 → 2020 | +0.61 | 7.0位 | 4/5 |
| 2020 → 2021 | −0.26 | 14.6位 | 1/5 |
| 2021 → 2022 | −0.06 | 10.8位 | 3/5 |
| 2022 → 2023 | −0.10 | 13.8位 | 1/5 |
| 2023 → 2024 | +0.31 | 8.8位 | 3/5 |
| 2024 → 2025 | +0.26 | 10.6位 | 3/5 |
| 平均 | +0.07 | 10.72位 | 52% |
読み取れることは3つです。
- プラスだったのは10回中4回。半分以上の年では、前年の順位と翌年の順位が逆向きでした
- 平均は+0.07。ゼロ(無関係)とほとんど区別がつきません
- 年ごとの振れが大きい。2019→2020は+0.61と強く引き継がれた一方、2015→2016は−0.33と逆転しました
そして最も端的なのが前年トップ5の翌年平均順位10.72位という数字です。20銘柄からランダムに5つ選んだときの期待値は10.5位ですから、「去年の勝ち組」という情報は、くじ引きに対してほぼ何も上乗せしていません。翌年も上位半分に残った割合も52%で、コイン投げと同じです。
③ 実際に何が起きたのか
平均値だけでは実感が湧かないので、具体例を挙げます。
- 信越化学:2023年は+86.8%で20銘柄中トップ。翌2024年は−9.0%で下位グループに沈みました
- オリエンタルランド:2023年+37.3%と好調だった翌年、2024年は−34.6%で最下位でした
- 日立製作所:2018年−32.3%と大きく負けた翌年、2019年は+61.6%。さらに2024年は+96.0%と20銘柄中トップになりました
- 武田薬品:2018年−40.0%(最下位級)から、翌2019年は+22.0%へ
大きく上がった翌年に大きく下げ、大きく下げた翌年に大きく上がる——そういう例が、順位を引き継いだ例と同じくらい見つかります。
一方で「引き継がれた年」もありました。2016→2017は順位相関+0.40で、前年トップ5が5銘柄とも翌年も上位半分に残っています。2019→2020は+0.61。ただしこの2つは10回中の2回であり、これを法則と呼ぶには足りません。
④ なぜ引き継がれないのか
理由は2つ考えられます。
① 良いニュースは株価にすぐ入る
株価は「これから良くなりそうだ」という期待で先に上がります。去年の上昇は、去年のうちに材料が織り込まれた結果です。今年も上がるには、去年の期待をさらに上回る材料が要る——去年上がったこと自体は、その材料になりません。
② 上がったぶん、割高になっている
前年に大きく上がった銘柄は、たいていPERやPBRの水準も上がっています。同じ業績なら、次の上昇に必要な「上振れ」は前年より大きくなります。この点は企業の数字の読み方の記事で扱った、PERが「利益の何年分か」という話と同じ構図です。
この2点は、相場の「クセ」を実測した記事で見た構図とも共通します。取り出せそうに見える規則性は、見つかった時点で値段に入っているのです。
⑤ ではどうするのか、ではなく
ここから「では何を買えばよいか」という話にはなりません。この集計が示しているのは、選び方の問題ではなく、順位そのものが安定しないという性質です。
もし順位が読めないなら、実務的に効くのは「当てにいく」より「外れても致命傷にならない形にする」ほうです。当サイトの実測では、業種を散らした20銘柄のうち5銘柄に分けるだけで、1銘柄ぶんの値動きのブレの26.6%が消えました(分散は何銘柄から効くのか)。順位が読めないことと、分散が効くことは、同じ事実の裏表です。
また、「去年の勝ち組リスト」を見るときには、そもそもそのリストに残っている銘柄しか見えていないことにも注意が必要です。この視点は生存者バイアスの記事にまとめています。
⑥ この集計の限界
- 大型株20銘柄・11年ぶんという小さなサンプルです。年の組み合わせは10組しかなく、平均+0.07という値そのものに大きな誤差があります
- 母集団の選び方に依存します。この20銘柄は「2026年時点で大型株である会社」であり、その時点で生き残っている会社に偏っています
- 中小型株では別の結果になりえます。規模の小さい銘柄では値動きの性質が変わることが知られています
- 暦年という区切りは恣意的です。4月〜3月で区切れば順位も相関も変わります
- 売買コストと税金を含んでいません。毎年入れ替える戦略を想定すれば、その分だけ成績は下がります
- 配当込みのリターンですが、税引き前です。課税口座では受け取り時に課税されます
⑦ 記録から言えること
- 前年トップ5の翌年平均順位は10.72位。ランダムに選んだ場合の期待値10.5位と、ほぼ同じでした
- 順位相関がプラスだったのは10回中4回、平均+0.07。無関係とほとんど区別がつきません
- 翌年も上位半分に残った割合は52%。コイン投げと同水準です
- 引き継がれた年もあります(2019→2020は+0.61)。ただし10回中2回で、法則と呼ぶには足りません
- 順位が読めないことは、分散が効くことの裏返しです。当てにいくより、外れても致命傷にならない形のほうが再現性があります
出典・手法: 各社の調整後終値(配当を反映)はYahoo Financeより取得し、当サイトが集計(2026-08-24実行、対象は2015〜2025年の11年・大型株20銘柄)。年間リターンは各年の年末終値どうしの変化率で、順位は各年のリターンの降順(1位=その年いちばん上がった銘柄)。順位相関は前年と翌年の順位どうしの相関(スピアマンの順位相関)です。「ランダムなら期待される順位」は20銘柄の順位の平均値10.5です。集計スクリプトはリポジトリの scripts/winners_persistence.py として公開しています。
※本記事は過去データの集計(教育目的)であり、特定の銘柄の推奨や将来の値動きの予測ではありません。過去の傾向が今後も続くことを示すものではありません。
関連記事: 分散は何銘柄から効くのか / 相場の「クセ」は本当にあるのか / 生存者バイアスとは何か

コメント